コラム法務

太陽光の訪問販売で守るべき法律 ― 特定商取引法の要点

2026-08-14 ASI株式会社

結論

訪問販売は特定商取引法の規制対象です。勧誘前に事業者名・商品・勧誘目的を告げること(第3条)、断られた相手への再勧誘の禁止(第3条の2)、契約書面の交付(第4条・第5条)、8日間のクーリングオフ(第9条)が義務づけられています。営業リストの管理でも、断られた家を再訪問しない仕組みが要ります。

太陽光の訪問販売は、特定商取引法の「訪問販売」にあたります。 ルールは明確で、条文を読めば分かります。 この記事では要点を並べたうえで、営業リストの運用にどう落とすかまで書きます。

この記事は特定商取引法の条文と消費者庁の解説をもとにしていますが、法的助言ではありません。 実際の運用は、弁護士など専門家にご確認ください。

全体像

場面義務・禁止条文
勧誘の前事業者名・商品・勧誘目的を告げる第3条
勧誘の前勧誘を受ける意思があるかを確認する(努力義務)第3条の2第1項
断られた後再勧誘の禁止第3条の2第2項
申込みを受けたとき申込書面の交付第4条
契約したとき契約書面の交付第5条
勧誘全般不実告知・重要事項の不告知の禁止第6条
契約後8日間クーリングオフ第9条
過量な契約1年間、契約の解除ができる第9条の2

①勧誘の前に告げること(第3条)

玄関先で、勧誘を始めるに次の3つを告げる義務があります。

  1. 事業者の氏名または名称
  2. 販売しようとする商品・役務の種類
  3. 契約の締結について勧誘する目的であること

「近所で工事をしていまして」「電気代の調査で回っています」から入るのは、3つ目に反します。 目的を伏せて話を始めてはいけない、というのがこの条文の趣旨です。

②断られたら、二度目はない(第3条の2)

契約を締結しない旨の意思を表示した相手に対して、 その契約の勧誘を続けること、および再び勧誘することが禁止されています。

ここが、営業リストの運用に一番効きます。

状況次の訪問
「結構です」と断られたできない
不在だったできる
「今は忙しい、また今度」と言われた断りの意思とは限らない。慎重に
担当者Aが断られ、翌月担当者Bが行くできない(会社として同じ)

最後の行が重要です。「別の担当者だから知らなかった」は通りません。 会社として、どの家に断られたかを把握している必要があります。

訪問結果が担当者個人のメモにしか残っていない会社は、この規定を守ろうとしても守れない状態にあります。 詳しくは訪問結果を紙とメモで管理するのをやめるに書きました。

③書面の交付(第4条・第5条)

申込みを受けたとき、および契約したときに、法定の事項を記載した書面を交付する義務があります。

記載すべき主な事項です。

クーリングオフの記載には様式の定めがあります。 書き方が要件を満たしていないと、クーリングオフの期間が起算されません(=8日を過ぎても解除できる状態が続きます)。

2023年6月からは、消費者の承諾があれば電磁的方法による交付もできるようになりました。 ただし承諾の取り方に細かい要件があります。

④クーリングオフ(第9条)

項目内容
期間法定書面を受け取った日から8日間
方法書面または電磁的記録(メール等)
理由不要(無条件)
費用負担事業者負担。損害賠償や違約金の請求はできない
期間が延びる場合書面の不備、妨害があった場合は8日を過ぎても可能

「工事に着手したのでクーリングオフできません」は誤りです。 役務提供が始まっていても、期間内であれば解除できます。原状回復の費用も事業者の負担です。

⑤不実告知・重要事項の不告知(第6条)

太陽光の営業で、特に問題になりやすいところです。次のような説明は該当し得ます。

言い方問題
「実質0円で設置できます」(条件を伏せる)重要事項の不告知
「必ず○年で元が取れます」不確実な事項の断定的判断の提供
「今日決めていただければモニター価格に」実際にそういう制度がなければ不実告知
「国の制度で義務化されました」事実と異なる
発電量の見込みだけ伝え、メンテナンス費用に触れない重要事項の不告知にあたり得る

発電量の試算は、前提条件(屋根の向き、傾斜、日照、機器の劣化率)を一緒に示すのが安全です。

⑥過量販売(第9条の2)

日常生活において通常必要とされる分量を著しく超える契約は、契約から1年間、解除できます。

太陽光では、屋根に対して明らかに過大な容量や、 使用電力量に見合わない蓄電池の容量が問題になり得ます。

営業リストの運用に落とすと

法律の要請リストの運用でやること
再勧誘の禁止(第3条の2)断られた家を記録し、次のリストから自動で外す
担当者名の記載(第5条)誰が訪問したかを残す
クーリングオフ期間の管理(第9条)書面を渡した日を記録する
説明内容の記録(第6条)何を説明したかを残す(トラブル時の証拠になります)

1つ目が最も重要です。会社として「断られた家」を持っていない状態は、法令違反が起きうる状態です。

逆に言えば、訪問結果を記録する仕組みは、業務効率のためだけのものではありません。 法令を守るための仕組みでもあります。

参考になる情報源

相談事例を読むと、どの説明の仕方がトラブルになるかが具体的に分かります。 営業研修の材料として使えると思います。

よくあるご質問

訪問販売で最初に言わなければならないことは何ですか

勧誘に先立って、事業者の氏名または名称、販売しようとする商品・役務の種類、契約締結について勧誘する目的であることの3つを告げる義務があります(特定商取引法第3条)。

一度断られた家にもう一度行ってもよいですか

いけません。契約を締結しない旨の意思を表示した相手に対する再勧誘は禁止されています(同法第3条の2第2項)。会社としてどの家に断られたかを記録しておく必要があります。

クーリングオフの期間は何日ですか

法定書面を受け取った日から8日間です(同法第9条)。この期間内であれば、書面または電磁的記録により無条件で契約を解除できます。

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