名簿を買って訪問営業しても大丈夫か ― 個人情報保護法の話
結論
個人情報保護法では、第三者から個人データの提供を受けるとき、提供元が適法に取得したことの確認と記録が義務づけられています(第30条)。名簿を購入する場合、この確認記録がないと購入した側も責任を問われます。氏名を含まない「建物の位置と屋根の状態」であれば個人情報には当たりません。
「営業リストを買いたいが、法的に大丈夫か」という質問をよくいただきます。 答えは「買うこと自体は違法ではないが、確認と記録の義務がある」です。 条文に沿って、実務で何をすればよいかを整理します。
この記事は個人情報保護法の条文と個人情報保護委員会のガイドラインをもとに書いていますが、法的助言ではありません。 実際の運用は、弁護士など専門家にご確認ください。
結論 ― 3つのことが要ります
| やること | 根拠 | |
|---|---|---|
| ① | 提供元が適法に取得したことを確認する | 個人情報保護法 第30条第1項 |
| ② | 確認した内容を記録に残す | 同条第3項 |
| ③ | 記録を保存する(原則3年) | 同条第4項・規則 |
この3つを怠ると、買った側が義務違反になります。売った側だけの問題ではありません。
①確認すること
個人データの提供を受けるときに確認するのは、次の2つです。
| 確認する内容 | 具体的に何を聞くか |
|---|---|
| 提供元の氏名・名称・住所 | 法人なら名称、住所、代表者の氏名 |
| その個人データを取得した経緯 | どこから、どうやって集めたものか |
2つ目が実務では難しいところです。「独自に収集しました」だけでは確認したことになりません。 本人から直接取得したのか、公開情報から集めたのか、他社から買ったのか——ここを聞く必要があります。
他社から買ったものであれば、その前の出どころもたどれる状態か。 説明できない業者からは買わない、という判断が現実的だと思います。
②③記録に残すこと
記録には、次の項目を残します。
- 提供元の氏名または名称、住所(法人は代表者の氏名も)
- 提供を受けた年月日
- その個人データによって識別される本人の氏名など
- 個人データの項目(住所、電話番号、築年数など)
- 本人の同意を得ている場合はその旨
保存期間は原則3年です。契約書などで代替できる場合もありますが、 「買ったときのメールが残っている」だけでは足りないことが多いので、 リスト単位で1枚の記録を作っておくのが確実です。
「氏名のないリスト」は個人情報ではありません
ここが、太陽光の営業では効いてきます。
個人情報とは、生存する個人に関する情報のうち、 氏名などによって特定の個人を識別できるもの(他の情報と容易に照合できるものを含む)です。
| リストの中身 | 個人情報か | 第30条の義務 |
|---|---|---|
| 氏名+住所+電話番号 | 該当する | かかる |
| 住所+世帯主の氏名 | 該当する | かかる |
| 建物の位置と屋根の状態だけ | 該当しない | かからない |
訪問先を決めるだけなら、氏名は要りません。 「この位置の建物に太陽光が載っていない」という情報だけで、営業には足ります。
ただし、他の情報と容易に照合して個人を識別できる状態にあれば、該当することがあります。 たとえば自社の顧客名簿と住所で突き合わせられる形で保有していれば、実質的に個人情報として扱う必要が出てきます。 形式ではなく、実際の運用で判断されます。
名簿には、もうひとつ実務上の弱点があります
法的な話とは別に、太陽光の営業では致命的な問題があります。
名簿には「その家に太陽光が付いているか」が入っていません。
これは名簿屋の怠慢ではなく、そういうデータが世の中にないからです。 資源エネルギー庁のFIT公表データも市区町村単位までで、個別の住所は公開されていません。
| 公表されているもの | 公表されていないもの |
|---|---|
| 市区町村ごとの認定件数(例:群馬県太田市 13,819件) | 個別の住所 |
| 設備の区分(10kW未満/以上) | 設置者の氏名(住宅用) |
つまり名簿を買っても、1軒ずつ航空写真で確認する作業は残ります。 そこが下調べで一番時間のかかるところなので、名簿を買っても半日は半日のままです。
訪問販売には、別の法律もかかります
リストの入手だけでなく、使い方にも規制があります。
| 場面 | 規制 | 根拠 |
|---|---|---|
| 訪問して勧誘する前 | 事業者名・商品・勧誘目的を告げる | 特定商取引法 第3条 |
| 断られた後 | 再勧誘は禁止 | 同法 第3条の2第2項 |
| 契約時 | 書面の交付 | 同法 第4条・第5条 |
| 契約後8日間 | クーリングオフ | 同法 第9条 |
特に2つ目は、リストの運用に直結します。 断られた家を記録して、次のリストから外す仕組みがないと、会社として守れません。 詳しくは特定商取引法の要点に書きました。
まとめ ― 実務としてどうするか
| 選択肢 | 必要な手続き | 太陽光の有無 |
|---|---|---|
| 氏名つきの名簿を買う | 確認・記録・3年保存 | 入っていない |
| 建物の位置と屋根の状態だけのリスト | 不要 | 入っている |
電話営業やDMを併用するなら氏名と電話番号が要りますが、 訪問だけなら、氏名のないリストで足ります。 法的な手続きが減り、下調べの手間も減ります。
ソーラーリストが扱っているのは、建物の位置と屋根の状態だけです。 氏名・電話番号は含みません。
よくあるご質問
名簿を買うこと自体が違法ですか
購入自体が直ちに違法になるわけではありません。ただし提供元が適法に取得したことの確認と、その記録の作成・保存が義務です(個人情報保護法第30条)。これを怠ると受領した側の義務違反になります。
何を記録として残せばよいですか
提供元の氏名・住所(法人なら名称と代表者名)、提供を受けた年月日、対象となった個人データの項目、提供元がその個人データを取得した経緯です。記録は原則3年間保存します。
建物の位置だけのリストは個人情報ですか
氏名その他の記述により特定の個人を識別できなければ、個人情報には当たりません。ただし他の情報と容易に照合して個人を識別できる状態なら該当します。運用の実態で判断されます。
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