太陽光の営業エリアはどう決めるべきか ― 4つの判断材料
結論
営業エリアは、①その市区町村の太陽光設置率(FIT公表データで分かります)、②戸建ての密度、③屋根の面積、④担当者の移動時間の4つで決めます。設置率が高い地域は「未設置の家が少ない」ため、一見よさそうでも効率が落ちます。群馬県太田市は13,819件・世田谷区は13,576件と、件数だけでは判断できません。
「今月はこのあたりを回ろう」を、勘で決めていませんか。 実は公式データで確かめられる部分と、航空写真から測れる部分があります。 この記事では、エリアを決める4つの判断材料と、それぞれの調べ方を書きます。
4つの判断材料
| 判断材料 | 何が分かるか | どこで調べるか |
|---|---|---|
| ①設置率 | 未設置の家がどれだけ残っているか | 資源エネルギー庁のFIT公表データ(無料) |
| ②戸建ての密度 | 1日に何軒回れるか | 航空写真+建物データ |
| ③屋根の面積 | 何kW提案できるか | 建物データ(床面積) |
| ④移動時間 | 実働時間のうち何割が移動か | 地図 |
①設置率 ― 高いエリアは狙い目ではありません
「太陽光が売れている地域だから行こう」は、半分正しくて半分間違いです。 設置率が高いということは、未設置の家が少ないということでもあります。
市区町村ごとの設置件数は、資源エネルギー庁の 「固定価格買取制度 情報公表用ウェブサイト」で公開されています。無料で誰でも見られます。 実際に調べた2つの地域です。
| 地域 | FIT認定件数(住宅用) | 戸建て数(概算) | 推計の設置率 |
|---|---|---|---|
| 群馬県太田市 | 13,819件 | 約6.2万戸 | 約22% |
| 東京都世田谷区 | 13,576件 | 約7.7万戸 | 約18% |
件数はほぼ同じですが、意味はまったく違います。 太田市は5軒に1軒以上が設置済みで、残りは約4.8万戸。世田谷区は残り約6.3万戸です。 さらに世田谷区は面積が狭いので、移動時間は太田市よりずっと短くなります。
FIT認定件数には廃止済みの設備や事業用の小規模設備も含まれ、戸建て数も概算です。 そのまま設置率として使うと実態より高く出ます。順位づけの材料としては使えますが、絶対値としては扱わないでください。
調べ方
- 「固定価格買取制度 情報公表用ウェブサイト」で公表データを開く
- 太陽光・10kW未満(住宅用)で絞る
- 都道府県・市区町村ごとの認定件数を見る
- その市区町村の戸建て数(国勢調査・住宅土地統計調査)で割る
個別の住所は公開されていません。市区町村までです。 「特定の家に付いているか」を公式データで知る方法は、現時点ではありません。
②戸建ての密度 ― 1日に何軒回れるか
同じ「1エリア」でも、密度によって中身が変わります。実測した2エリアです。
| エリア | 検出した建物 | うち戸建て | 戸建ての割合 |
|---|---|---|---|
| 愛知県犬山市犬山 | 486棟 | 462棟 | 95.1% |
| 京都府宇治市広野町 | 408棟 | 380棟 | 93.1% |
全エリア合計2,635棟の内訳を見ると、こうなっています。
| 種別 | 棟数 | 割合 |
|---|---|---|
| 戸建て | 2,076棟 | 78.8% |
| 集合住宅と思われるもの | 46棟 | 1.7% |
| その他(倉庫・車庫・工場など) | 513棟 | 19.5% |
建物の2割は、そもそも訪問先になりません。 地図で「家がたくさんある」ように見えても、実際に回れる件数はこの割合を掛けた数になります。
③屋根の面積 ― 提案できる容量が変わります
実測した2,635棟の床面積の分布です。
| 床面積 | 棟数 | 目安 |
|---|---|---|
| 50〜100平方メートル | 1,142棟 | 最も多い層 |
| 100〜150平方メートル | 531棟 | |
| 150〜200平方メートル | 203棟 | |
| 200〜300平方メートル | 164棟 | 大きめの戸建て |
| 300平方メートル以上 | 115棟 | 店舗併用・倉庫など |
平均は124.3平方メートル、最小15平方メートル、最大1,900平方メートルでした。
屋根の載せられる面はこの一部です。切妻屋根なら南面はおよそ半分、 さらに軒や設備を避けるので、実際に載る面積はもっと小さくなります。 床面積50〜100平方メートルの層が最も厚いという事実は、 「大容量を提案しても屋根に載らない家が多数派」ということでもあります。
④移動時間 ― 実は一番効くかもしれません
1日8時間のうち、移動が3時間なら実働は5時間です。 訪問件数を1.2倍にするより、移動を1時間減らす方が効くことがあります。
エリアを地理的に固めることの効果は、次の2つです。
- 移動時間が減る(当然)
- その地域の話ができるようになる(近所の設置事例、その地域の日照、その地域の補助金)
自治体の補助金は市区町村ごとに違います。エリアを固めると、この情報を担当者全員で共有できます。
実務としての決め方
4つを合わせると、順番はこうなります。
- 候補となる市区町村を、FIT公表データの設置率で並べる(低い方が未設置が多い)
- そのうち移動時間が許容できる範囲を残す
- 残った中で、戸建ての密度が高い町丁目から着手する
- 回った結果を記録し、次のエリアの判断材料にする
4番目が抜けると、毎回1番目からやり直しになります。 記録が会社に残らないことの損失については、訪問結果の管理に書きました。
使える航空写真は、地域によって違います
もうひとつ、エリアを決めるときに知っておいた方がよいことがあります。 航空写真の解像度は、地域によって2倍違います。
国土地理院が全国で公開している写真は1画素0.48mですが、 一部の自治体はその2倍の解像度(1画素0.24m)をオープンデータとして公開しています。 実測した範囲では、次の8地域でした。
| 地域 | 解像度 |
|---|---|
| 京都府(府域の広い範囲) | 1画素0.24m |
| 大阪市 | 1画素0.24m |
| 東京都練馬区 | 1画素0.24m |
| 兵庫県姫路市・朝来市 | 1画素0.24m |
| 鹿児島市 | 1画素0.24m |
| 愛知県犬山市 | 1画素0.24m |
| 滋賀県長浜市 | 1画素0.24m |
| 上記以外の全国 | 1画素0.48m |
合計で約536万人、日本の人口の4.3%にあたります。 東京都内で該当するのは練馬区だけです。
この差は判定の精度に直結します。詳しくは航空写真の解像度の話をご覧ください。 ソーラーリストでは、住所を入れるとその地域で使える解像度をその場で表示します。 ご検討中のエリアが該当するかはお問い合わせいただければお調べします。
よくあるご質問
市区町村ごとの太陽光の設置件数はどこで分かりますか
資源エネルギー庁が公表している「固定価格買取制度 情報公表用ウェブサイト」で、市区町村ごとの認定件数が公開されています。個別の住所は公開されていません。
設置率が高い地域は狙い目ですか
逆です。設置率が高いほど未設置の家が少なくなります。ただし「その地域で太陽光が売れている」ことの証拠でもあるため、単純ではありません。密度と移動時間を合わせて見る必要があります。
屋根の面積は営業に関係ありますか
します。実測した2,635棟の平均屋根面積は124.3平方メートルでしたが、50〜100平方メートルの層が最も厚く1,142棟ありました。屋根が小さいと載せられる枚数が減り、提案できる容量が変わります。
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