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太陽光の営業を効率化する ― 下調べをやめる

2026-08-14 ASI株式会社

結論

太陽光の営業における下調べ(航空写真で1軒ずつパネルの有無を確認する作業)は、1エリア200〜500軒で半日ほどかかります。この作業は「判定」と「記録」の2つに分けられ、判定は自動化できます。実測では462棟の判定が無人で完了し、そのうえで人が要確認の19棟を見直して営業リスト458件が確定しました。記録が残らないことの方が、実は損失が大きい問題です。

太陽光の訪問販売では、営業に出る前に「どの家に行くか」を決めます。 多くの会社が、地図サービスの航空写真を1軒ずつ拡大して、パネルが載っていない家を探しています。 この記事では、その作業を工程に分けて数え、機械に任せられる部分を実際に自動化した結果を書きます。

下調べの工程を、5つに分けてみる

  1. 地図を開き、担当エリアを表示する
  2. 1軒ずつ拡大して、屋根を見る
  3. パネルがなければ、住所を控えるか地図にピンを打つ
  4. 担当者の人数ぶんに割り振る
  5. 回った結果を、帰社後にまとめる

1エリア(200m四方で200〜500軒)ぶんで半日ほどかかる、という話をよく聞きます。 実際、私たちが調べたエリアの建物数はこの通りでした。

エリア検出した建物うち戸建て
愛知県犬山市犬山486棟462棟
京都府宇治市広野町408棟380棟

この1棟ずつを拡大して見る、というのが2番目の工程です。 462棟を1軒10秒で見ても77分、実際には拡大・移動・住所の書き取りが入るので、半日という感覚は誇張ではありません。

この作業が生んでいるものと、生んでいないもの

生んでいるのは「行き先のリスト」です。これは確かに必要なものです。

生んでいないのは会社の資産です。 誰がどこを回ったか、断られたのか不在だったのかは、担当者個人のメモに残ります。 その人が辞めれば消えます。翌月に同じエリアを回るとき、また最初から拡大して見ることになります。

もうひとつ、法律上の理由もあります。 訪問を断られた相手への再勧誘は、特定商取引法第3条の2で禁止されています。 誰に断られたかを会社が把握していなければ、この規定を守ろうとしても守れません。 詳しくは特定商取引法の要点に書きました。

2つに分けて考える

この作業は、実は性質の違う2つを同時にやっています。

やっていること中身機械にできるか
判定 屋根にパネルが載っているかを見る できます(ただし写真の解像度に左右されます)
記録 誰がどこを回り、結果がどうだったかを残す 仕組みが要ります

判定を自動化して、記録が会社に残るようにする。順番としては、この2つは同時に手を付けた方が効きます。 判定だけ速くしても、結果が個人のメモに戻るなら、翌月また同じところから始めることになるからです。

実際に自動化して、何が出たか

愛知県犬山市の1エリアを、住所を入れるところから最後まで無人でやってみました。結果です。

判定棟数割合営業リストに載るか
パネルなし438棟94.8%載る
要確認(判断がつかない)19棟4.1%別枠。人が見る
パネルあり5棟1.1%載せない
合計462棟100%

ここで大事なのは「要確認」を別枠にしていることです。 この19棟を「なし」に混ぜれば、リストは457件になって数字は良く見えます。 ただし混ぜた瞬間に、営業担当がその19軒で「もう付いてます」と言われる可能性を抱えることになります。

その19棟を、人が拡大して見直しました

要確認は「保留」ではなく、人が見て確定させるための待ち行列です。実際に全部見ました。

自動判定人が見直した後
パネルなし(営業対象)438棟458棟
要確認19棟0棟
パネルあり5棟4棟

中身を見ると、両方向に間違えていました。

結果、営業対象は438件から458件に増えました。 要確認を別枠にしておいたおかげで、間違いが営業現場に流れる前に潰せた形です。

この分け方は、私たち自身の失敗から来ています。 開発の途中で、判定できなかった459棟を営業対象に含めてしまっていたことがありました。 地図には出さないようにして安心していたのですが、お客様に渡すCSVには入ったままでした。 出口はひとつではない、という当たり前のことを、実際に穴を開けてから学びました。

建物はどうやって見つけているか

「エリアの中の家を全部見つける」のは、実は判定より前の問題です。 ここを外すと、そもそも見に行かない家が出ます。

私たちは国土地理院が公開している建物のデータ(地理院地図Vector)を使っています。 全国の建物の輪郭が、無料・商用可で手に入ります。 実測では、610メートル四方の範囲ひとつから438棟の建物が取れました。

ここから、床面積40〜400平方メートルのものだけを住宅として残します。 物置・車庫・倉庫・工場はここで落ちます。

エリア検出した建物住宅として残した数
愛知県犬山市犬山486棟462棟
京都府宇治市広野町408棟380棟
合計894棟842棟

残った842棟の床面積は、平均103.3平方メートル、最小41、最大399でした。 最も多いのは50〜100平方メートルの層で477棟。日本の戸建ての実態と合っています。

判定を自動化するときの注意点

ここで一つ、知っておいた方がよいことがあります。 航空写真からの判定は、その地域で手に入る写真の解像度でほぼ決まります。

住宅用のパネル1枚は約1.65m×1.0mです。地上解像度0.48mの写真では約3.4画素にしかなりません。 この大きさでは、パネルと濃い色の屋根材を見分けられません。

同じ家を、地上解像度0.48mの航空写真と0.24mの航空写真で並べた比較。左は屋根がぼやけて判別できないが、右はパネルの格子が数えられる
愛知県犬山市の同じ家。左が全国で無料の写真(1画素0.48m)、右が犬山市が公開している写真(1画素0.24m)。
出典:国土地理院 地理院タイル/犬山市 公共測量成果(CC BY 4.0)

実際に同じ家を0.48mと0.24mの写真で並べたところ、6棟のうち2棟で、0.48mでは「ただの濃い屋根」にしか見えないものが、 0.24mでは明確なパネルとして見えました。

つまり、自動化しても写真が悪ければ3棟に1棟を見落とします。 ツールを検討するときは、「AIが判定します」ではなく 「どの写真を使って判定していますか」と聞いてみてください。 詳しくは航空写真の解像度の話に書きました。

効率化で何が変わるか

逆に、効率化しても変わらないことも書いておきます。 成約率は上がりません。 変わるのは「無駄足の数」と「同じことを二度調べる時間」です。 ここを誇張して売っている説明を見かけたら、疑ってよいと思います。

よくあるご質問

1エリアの下調べにどれくらい時間がかかりますか

200〜500軒のエリアで半日ほど、という話をよく聞きます。地図を開く・1軒ずつ拡大する・住所を控える・担当者に割り振る・結果をまとめる、の5工程があるためです。

航空写真からの判定は自動化できますか

できます。実測では愛知県犬山市の1エリア462棟を無人で判定し、パネルあり5棟・要確認19棟・なし438棟という結果を得ました。ただし自動判定だけでは終わりません。要確認の19棟と「あり」の5棟を人が拡大して見直したところ、本物のパネルは4棟で、営業リストは458件になりました。

自動化すると成約率は上がりますか

上がりません。変わるのは無駄足の数と、同じことを二度調べる時間です。成約率は営業のやり方で決まるもので、リストは「無駄な訪問を減らす」ところまでしか効きません。

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