コラム技術

航空写真で太陽光パネルは見分けられるのか ― 解像度で決まる話

2026-08-13 ASI株式会社

結論

住宅用の太陽光パネル1枚(約1.65m×1.0m)は、地上解像度0.48mの航空写真では約3.4画素にしか写りません。この大きさではパネルごとの格子が見えず、濃い色の屋根材と区別できません。0.24mなら約6.8画素、0.05mなら約33画素になり、判別できるようになります。

「航空写真を見れば、屋根に太陽光が載っているか分かる」——確かに、人が拡大して見れば分かります。 ただしどの航空写真を使うかで、見えるものが根本的に変わります。 この記事では、実際に測った数字と、同じ家を撮り比べた画像で説明します。

まず、この2枚を見比べてください

同じ家を、地上解像度0.48mの航空写真と0.24mの航空写真で並べた比較。左は屋根がぼやけて判別できないが、右はパネルの格子が数えられる
愛知県犬山市の同じ家(同じ緯度経度・同じ範囲40m四方)。左が全国で無料の写真(1画素0.48m)、 右が犬山市が公開している写真(1画素0.24m)。 左では屋根に何が載っているか分かりませんが、右では屋根の左半分にパネルの格子が数えられます。
出典:国土地理院 地理院タイル/犬山市 公共測量成果(CC BY 4.0・OpenStreetMap Foundation Japan がホスト)

この2枚は同じ緯度経度から、同じ40m四方を切り出したものです。 違うのは、どちらの航空写真を使ったかだけです。 左を見て「この家にはパネルがない」と判断すると、間違えます。

撮影された時期は同じではありません(別々の航空測量によるものです)。 ただしこの家のパネルは両方の写真に写っており、 「あるのに見えない」ことを示す比較として成り立ちます。

パネル1枚は、何画素に写るのか

住宅用の太陽光パネルは1枚あたり約1.65m×1.0mです。 これが写真の中で何画素になるかは、その写真の地上解像度(1画素が地上の何メートルにあたるか)で決まります。 計算は単純で、パネルの長辺1.65mを地上解像度で割るだけです。

航空写真地上解像度パネル1枚の長辺格子は見えるか入手
国土地理院(全国最新写真)約0.48m約3.4画素見えない無料・全国
自治体が公開する高解像度約0.24m約6.8画素条件次第で見える無料・一部地域
民間の20cmオルソ約0.20m約8.3画素見える有料
民間の5cmオルソ約0.05m約33画素はっきり見える有料

地上解像度は緯度によってわずかに変わります。表の数値は北緯35度付近(本州の多く)での概算です。

3画素で何が起きるか

パネル1枚が3画素にしかならない場合、パネルとパネルの境目(格子)は原理的に写りません。 1画素より細いものは、画像として存在できないからです。

すると、見えるのは「屋根の一部が濃い色をしている」という情報だけになります。 ところが日本の住宅には、次のような屋根が非常に多くあります。

この解像度では、これらとパネルを見分けられません。 「濃い色の矩形が屋根にある」という手がかりしか残らないためです。

実際に何棟見落とすのか — 実測

数字を出します。愛知県犬山市で、同じ6棟を0.48mと0.24mの両方で切り出し、並べて判定しました。

0.48m での見え方0.24m での見え方判定
1真っ白な屋根。何も見えない屋根一面に格子模様のパネル見落とし
2空き地空き地一致
3濃い屋根濃い屋根・パネルなし一致
4濃い屋根に白い何か明確な格子模様のパネル見落とし
5小さな濃い屋根屋根上に何かある判別困難
6濃い細長い屋根パネルなし一致

6棟のうち2棟を見落としました。3棟に1棟の割合です。 さらに背景に写っている周囲の家々にも、0.24mでは格子模様のパネルが多数見えていました。

もうひとつの検証 — 公式データとの照合

「本当に見落としているのか」を別の角度からも確かめました。 経済産業省が公表している市区町村ごとの太陽光認定件数と、 0.48mの写真だけで判定した結果を突き合わせます。

地域FIT認定件数(住宅用)戸建て数(概算)公式データからの設置率0.48mでの判定結果
群馬県太田市13,819件約6.2万戸約22%0.5%
東京都世田谷区13,576件約7.7万戸約18%0.3%

桁が違います。0.48mの写真だけで判定すると、実在するパネルのほとんどを見落とします。

FIT認定件数には、すでに廃止された設備や事業用の小規模設備も含まれます。また戸建て数は概算です。 そのまま「設置率」として使うと実態より高く出ますが、桁が2つ違うという結論は変わりません。

解像度を上げても間違えます ― 私たち自身の誤検出

ここで、自分たちの判定が実際に外した例を出します。 1画素0.24mの写真を使って「パネルあり」と判定した犬山市の4棟を、同じ縮尺で並べたものです。

判定がパネルありとした4棟の比較。左2棟は濃い格子の本物のパネル、右2棟は淡い格子で誤検出
左の2棟は濃い矩形が整列していて、パネルで間違いありません。 右の2棟は淡い色の細かい格子が屋根の全面を覆っており、パネルではありません。 それでも判定は、4棟とも「パネルあり(信頼度85)」と答えました。
出典:犬山市 公共測量成果(CC BY 4.0・OpenStreetMap Foundation Japan がホスト)

違いは、並べてしまえば明らかです。

本物のパネル誤検出したもの
濃い青灰色淡い褐色・白っぽい
格子の大きさ1〜2m(パネル1枚ぶん)それより細かい
屋根に占める範囲屋根の一部だけ屋根の全面を端から端まで覆う
輪郭屋根とは別に、独立した矩形の縁がある屋根そのものの形と一致する

「屋根の一部か、全面か」が一番効く手がかりでした。 太陽光パネルは屋根の面のうち日当たりのよい側にだけ載るので、屋根の輪郭とは別の矩形になります。 屋根材そのものの模様は、当然ながら屋根の形と一致します。

この4棟は、犬山市のエリアで「パネルあり」と判定された5棟のうちの4棟です。 つまり、その時点での判定は半分が外れていました。 「AIが判定するので正確です」という説明を、私たち自身は使えません。

この確認は、判定結果を人が拡大して見直したものです。 現地に行って確かめたわけではないので、右の2棟が具体的に何であるか(温室、農業用ハウス、特定の屋根材など)までは断定していません。 パネルではないことだけを述べています。

まぎらわしいもの(あらかじめ決めておくべきこと)

上のような取り違えは、見分け方を先に決めておけば減らせます。 高解像度でもパネルと間違えやすいものと、その見分け方です。

まぎらわしいものどう見えるか見分け方
折板屋根(工場・倉庫・車庫)細い縦縞が整然と並ぶ縞が屋根の全面を端から端まで走る。パネルは屋根の一部に載る
温室・ビニールハウス格子状に見える周囲に屋根がなく単独で建つ。白っぽく半透明で、骨組みが透ける
濃い瓦・スレート屋根濃い色の面面全体が同じ色で、独立した矩形の輪郭を持たない
ブルーシート青い矩形しわが寄っていて輪郭が不定形。パネルは直線的
太陽熱温水器屋根上の矩形パネルより小さく、横に円筒形のタンクが付く
空調の室外機屋上の小さな箱小さく、不規則に散らばる。整列していない

判定を厳しくしすぎると、逆に全部見落とす

ここで、私たち自身がやってしまった失敗を書いておきます。

青い瓦屋根をパネルと誤認するのを防ごうとして、判定の条件に 「パネル1枚ごとの格子が見えること」を入れたことがあります。 一見、もっともらしい条件です。

ところが、使っていたのは0.48mの写真でした。 その解像度では格子は原理的に見えません。 結果どうなったかというと、すべてが「パネルなし」に倒れました。

判定の条件検出した建物パネルあり
格子が見えることを必須にした19棟0棟(0%)
格子を条件から外した40棟3棟(7.5%)

同じ画像です。条件を変えただけで、こうなりました。 建物の検出数まで半分だったのも、この時に分かったことです。

教訓は単純です。判定の基準は、その写真で実際に何が見えるかに合わせなければ意味がありません。

1棟ずつ切り出すと、見え方が変わる

もうひとつ、解像度と同じくらい効くことがあります。どう切り出して見るかです。

建物を1棟ずつ40m四方で切り出し、判定対象を黄色い輪郭で囲んだ判定シート
建物を1棟ずつ切り出し、判定対象を黄色い輪郭で囲んだもの。 輪郭がないと、隣家の屋根と地続きに見えて「隣のパネル」を数えてしまいます。
出典:犬山市 公共測量成果(CC BY 4.0)/建物の輪郭:国土地理院 地理院地図Vector

実測した違いです。

見せ方1枚に写る棟数検出率
512画素四方にまとめて表示十数棟0%
1棟ずつ40m四方で切り出す1棟25%

画素数は同じです。1棟に集中させると、見えるものが変わります。 この25%という数字は、その地域の実際の設置率とほぼ一致しました。

切り出す範囲にも最適値があります

「狭く切り出すほど大きく見えるから良い」と思いがちですが、実際は違いました。 24m・32m・40m・48m・56m・64mで比べたところ、

さらに、コントラストを強調すると屋根が白飛びして逆に見えなくなりました。 効いたのは弱いシャープネスだけです。

まとめ — 検討するときに聞くべきこと

航空写真からの判定を使うツールを検討するとき、「AIが判定します」という説明だけでは何も分かりません。 聞くべきことはこちらです。

  1. どの航空写真を使っていますか(提供元と地上解像度)
  2. 私たちの営業エリアで、その写真は使えますか
  3. 撮影年度は画面で分かりますか
  4. 判定していない建物は、どう扱っていますか
  5. 外れていたとき、記録して次に反映できますか

ソーラーリストでは、住所からその地域で使える最良の写真を自動で選び、 低い解像度しかない地域では画面と資料の両方にその旨を表示します。 できないことは、先にお伝えしています

よくあるご質問

航空写真から太陽光パネルは見分けられますか

写真の地上解像度によります。1画素0.48mの写真ではパネル1枚が3.4画素にしかならず、濃い色の屋根材と区別できません。1画素0.24m以下であれば、パネルの格子が見えるようになります。

地上解像度とは何ですか

写真の1画素が地上の何メートルにあたるかを示す値です。0.48mなら1画素が地上48cm四方に対応します。パネル1枚の長辺1.65mをこの値で割ると、パネルが何画素に写るかが分かります。

低い解像度だと何棟くらい見落としますか

実測では、同じ6棟を0.48mと0.24mの写真で比べたところ2棟を見落としました。公式のFIT認定件数と突き合わせると、0.48mだけの判定は実在するパネルのほとんどを取りこぼします。

解像度を上げれば間違えなくなりますか

なりません。実測では、1画素0.24mの写真で「パネルあり」と判定した5棟を人が見直したところ、明らかにパネルだったのは2棟、パネルではなかったのが2棟、判断がつかなかったのが1棟でした。折板屋根やビニールハウスなど、まぎらわしいものの見分け方を決めておく必要があります。

パネルと屋根材を見分けるコツはありますか

「屋根の一部か、全面か」が最も効きます。太陽光パネルは日当たりのよい面にだけ載るため、屋根の輪郭とは別の矩形になります。屋根材そのものの模様は、屋根の形と一致します。

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