卒FITの家をリスト化できるか ― 年度別航空写真の限界
結論
卒FIT(固定価格買取の終了)の家は、年度別の航空写真をさかのぼって「パネルが写り始めた年」を探すことで推定できます。ただし実測したところ、犬山市2年度・京都府3年度・姫路市3年度・鹿児島市2年度・練馬区3年度と公開年度が少なく、5年度以上ないと営業に使える精度になりません。
「太陽光を10年前に付けた家」が分かれば、蓄電池の営業先になります。 航空写真をさかのぼれば設置時期が分かるはずだ——そう考えて、実際にやってみました。 結論から言うと、現時点では実用になりませんでした。その理由を数字で書きます。
考え方はこうでした
国土地理院は、年度別の航空写真を公開しています。同じ場所を年度ごとにさかのぼって、 パネルが写り始めた年を見つければ、設置時期が分かります。
| 年度 | その家の屋根 | 分かること |
|---|---|---|
| 2015年度 | パネルなし | 2016〜2018年に設置 |
| 2018年度 | パネルあり |
住宅用(10kW未満)の固定価格買取期間は10年です。 2016〜2018年に設置なら、買取終了は2026〜2028年。ここが蓄電池の提案時期になります。
年度が細かく揃っていれば、設置年を1年幅まで絞れます。理屈としては正しいはずでした。
実際に、何年度ぶんあったか
地理院の年度別写真は、全国どこでも全年度あるわけではありません。 実際に5地域で、どの年度が存在するかを数えました。
| 地域 | 利用できた年度の数 | 推定できる幅 | 実用になるか |
|---|---|---|---|
| 愛知県犬山市 | 2年度 | 数年幅 | ならない |
| 京都府 | 3年度 | 数年幅 | ならない |
| 兵庫県姫路市 | 3年度 | 数年幅 | ならない |
| 鹿児島市 | 2年度 | 数年幅 | ならない |
| 東京都練馬区 | 3年度 | 数年幅 | ならない |
どの地域も5年度に届きませんでした。
2年度しかないということは、「その2時点の間に設置された」ことしか分からないということです。 たとえば2017年度と2022年度の写真しかなければ、設置は2018〜2022年のどこか。 買取終了は2028〜2032年の5年幅になります。
蓄電池の営業は「来年買取が終わります」という話で入ります。 5年幅では、この話ができません。
もうひとつの壁 ― 年度別写真は解像度が低い
年度別写真には、さらに制約があります。最新の写真より解像度が低いのです。
パネル1枚は約1.65m×1.0mです。最新の全国写真(1画素0.48m)でも3.4画素にしかならず、 格子が見えないことは別の記事に書きました。
出典:国土地理院 地理院タイル/犬山市 公共測量成果(CC BY 4.0)
年度別写真はこれと同等かそれ以下なので、「パネルが写り始めた年」を判断すること自体が難しいという状態です。 年度数が足りない問題と、解像度が足りない問題が重なっています。
この2つを掛け合わせると
| 必要なもの | 現状 |
|---|---|
| 5年度以上の写真 | 2〜3年度 |
| パネルが判別できる解像度 | 0.48m以下(格子が見えない) |
| 撮影年度の均一さ | 地域によってばらばら |
3つとも足りていません。 この状態で「卒FITの家をリスト化できます」と言うことはできない、というのが結論です。
では、どうするか
①既設のパネルがある家を、先にリスト化しておく
設置年が分からなくても、「パネルが載っている家」は分かります。 実測したエリアでは、462棟中5棟が「あり」、19棟が「要確認」でした。
この家々は、いつか必ず卒FITを迎えます。まずリストとして持っておく。これはできます。
②訪問時に設置年を聞き取って、記録する
一番確実な方法です。「いつ頃お付けになったんですか」は自然な会話ですし、 お客様も普通に答えてくださいます。
これを1軒ずつ記録していけば、数年後に確実なリストになります。 航空写真からの推定と違って、間違いようがありません。
③FIT公表データで、地域の傾向を見る
資源エネルギー庁のFIT公表データには、市区町村ごとの認定件数があります。 個別の住所は分かりませんが、「この地域で何年頃に設置が増えたか」の傾向は読めます。
たとえば群馬県太田市は13,819件、東京都世田谷区は13,576件。 設置が集中した時期が分かれば、10年後にどのタイミングで卒FITが増えるかの見当がつきます。
今後どうなれば実用になるか
- 年度別写真が5年度以上ある地域が増えること(自治体のオープンデータ次第)
- 地上解像度20cm以下の写真が使えること(民間の航空測量会社が販売しています)
2つ目については、現在いくつかの航空測量会社に条件を照会しているところです。 実現できれば、この記事を書き直します。
この記事は「できない」ことを書いた記事です。 ソーラーリストの画面にも卒FITの機能はありますが、 年度別写真が足りない地域では推定幅が広いことを画面上で明示しています。 できないことは先にお伝えする方針です。
よくあるご質問
卒FITとは何ですか
住宅用太陽光の固定価格買取(FIT)は10年間です。この10年が終わることを卒FITと呼びます。買取価格が下がるため、蓄電池や自家消費への切り替えを検討する時期にあたります。
年度別の航空写真はどこで見られますか
国土地理院の地理院タイルに、撮影年度別のレイヤーが用意されています。ただしすべての地域に全年度があるわけではなく、地域によって2〜3年度しかありません。
5年度以上必要なのはなぜですか
2年度しかないと「その2時点の間に設置された」ことしか分からず、推定幅が数年になります。買取終了の年を1年単位で当てるには、少なくとも5年度、できれば毎年の写真が要ります。
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