コラムリスト

営業リストの「未設置」は、どこまで信じられるか

2026-08-13 ASI株式会社

結論

リストの「未設置」が外れる原因は、航空写真の撮影時期が古いこと、解像度が足りずパネルと濃い屋根材の区別がつかないこと、判定基準が実態に合っていないことの3つです。実測では、低解像度の写真で判定すると6棟中2棟を見落としました。また判定基準を1か所変えただけで、検出率が0%から7.5%に変わりました。

営業リストの「未設置」が外れると、担当者は玄関先で「もう付いてます」と言われます。 この記事では、なぜそれが起きるのかを3つに分けて、それぞれどれくらいの規模で起きるのかを実測値で示します。 自分たちが作ったツールが実際に間違えた話も含みます。

原因は3つしかない

原因何が起きているか実測での影響
①撮影時期写真が古く、その後に設置された写真は2019年度・2022年度が混在
②解像度パネルが小さすぎて濃い屋根と区別できない6棟中2棟を見落とし
③判定基準基準が写真の実態に合っていない検出率が0%になった

①撮影時期 ― 写真は「今」ではない

航空写真は毎年撮り直されるわけではありません。実際に私たちが取得した建物データに紐づいていた撮影年度は、こうでした。

撮影年度建物数
2022年度801棟
2019年度538棟
年度が特定できないもの1,296棟

2019年度の写真で判定した家に、2020年に設置されていたら、リストは外れます。 これは技術の問題ではなく、写真が存在しないという物理の問題です。解決できません。

できるのは、撮影年度を隠さないことです。 リストの1件ごとに「この判定は何年度の写真によるものか」が分かれば、営業する側が「古いから念のため聞いてみよう」と判断できます。 年度が分からないリストは、外れたときに理由すら分かりません。

②解像度 ― パネルが3.4画素にしか写らない

住宅用のパネル1枚は約1.65m×1.0mです。国土地理院が全国で公開している航空写真は1画素0.48mなので、 パネル1枚は3.4画素にしかなりません。

同じ家を0.48mと0.24mの航空写真で並べた比較。左では屋根に何があるか分からず、右ではパネルの格子が見える
左が全国で無料の写真(1画素0.48m)、右が自治体が公開している写真(1画素0.24m)。同じ家です。
出典:国土地理院 地理院タイル/犬山市 公共測量成果(CC BY 4.0)

この解像度では、次のものがすべて「濃い色の面」として同じに見えます。

実測では、同じ6棟を両方の解像度で見比べて2棟を見落としました。3棟に1棟です。

公式データと突き合わせると、もっとはっきりします

資源エネルギー庁が市区町村ごとのFIT認定件数を公表しています。これと突き合わせました。

地域FIT認定件数(住宅用)戸建て数(概算)公式データからの設置率0.48mでの判定
群馬県太田市13,819件約6.2万戸約22%0.5%
東京都世田谷区13,576件約7.7万戸約18%0.3%

桁が2つ違います。これは「少し見落としている」ではなく「ほとんど見えていない」ということです。

FIT認定件数には廃止済みの設備や事業用の小規模設備も含まれ、戸建て数も概算です。 そのまま設置率として使うと実態より高く出ます。ただし桁が2つ違うという結論は、この誤差では動きません。

③判定基準 ― 私たちが実際にやった失敗

ここが一番書きにくいところですが、書きます。同じ写真・同じ仕組みで、判定の基準を1か所変えただけで結果がこう変わりました。

判定の基準検出した建物パネルあり
「パネル1枚ごとの格子が見えること」を必須にした19棟0棟(0%)
格子を必須から外した40棟3棟(7.5%)

最初の基準は、青い瓦屋根をパネルと誤認するのを防ぐために入れたものでした。もっともらしい条件です。

ところが使っていたのは0.48mの写真でした。 その解像度では格子は原理的に写りません。1画素より細いものは画像として存在できないからです。 結果、すべてが「パネルなし」に倒れました。

教訓:判定の基準は、その写真で実際に何が見えるかに合わせなければ意味がありません。 厳しくすれば正確になる、というものではありません。

見せ方でも変わりました

もうひとつ、同じ画素数でも「どう切り出して見るか」で結果が変わりました。

見せ方1枚に写る棟数検出率
512画素四方にまとめて表示十数棟0%
1棟ずつ40m四方で切り出す1棟25%
建物を1棟ずつ40m四方で切り出し、判定対象を黄色い輪郭で囲んだ判定シート
1棟ずつ切り出し、判定対象を黄色い輪郭で囲んだもの。 輪郭がないと隣家の屋根と地続きに見えて、隣のパネルを数えてしまいます。
出典:犬山市 公共測量成果(CC BY 4.0)/建物の輪郭:国土地理院 地理院地図Vector

逆向きの間違い ― 付いていないのに「あり」にする

ここまでは「あるのに見えない」話でした。逆もあります。 自分たちの判定が実際に外した例を出します。

判定がパネルありとした4棟の比較。左2棟は本物のパネル、右2棟は誤検出
1画素0.24mの写真で「パネルあり(信頼度85)」と判定した4棟。 左の2棟は本物ですが、右の2棟はパネルではありません。
出典:犬山市 公共測量成果(CC BY 4.0)

犬山市のエリアで「あり」と判定された5棟を、人が拡大して見直した結果です。

見直した結果棟数
明らかにパネル2棟
パネルではなかった2棟
判断がつかなかった1棟

その時点の判定は、半分が外れていました。

ただし、この間違いは「なし」の側とは影響が違います。 誤って「あり」にした家は、営業リストから落ちるだけです。 無駄足にはなりませんが、行けたはずの家に行かないことになります。

間違いの向き現場で起きること気づけるか
あるのに「なし」にした訪問して「もう付いてます」気づく
ないのに「あり」にしたリストから落ちる気づかない

2つ目が厄介なのは、誰も気づかないことです。 行かなかった家のことは、営業の現場に情報が返ってきません。

見分け方として一番効いたのは「屋根の一部か、全面か」でした。 パネルは屋根のうち日当たりのよい面にだけ載るので、屋根の輪郭とは別の矩形になります。 屋根材そのものの模様は、屋根の形と一致します。

「判定できなかった」をどう扱うか

ここが、リストの品質で最も差が出るところだと考えています。

どんな仕組みでも、判断のつかない建物は必ず出ます。 木の影がかかっている、写真が雲で白い、屋根の一部しか写っていない、といった理由です。 問題は、それを「未設置」に混ぜるかどうかです。

扱いリストの件数現場で起きること
「未設置」に混ぜる多く見えるその分だけ「もう付いてます」が増える
別枠に分ける少なく見えるリストの中身は信用できる

実測したエリアでは、462棟のうち19棟(4.1%)が要確認でした。 これを混ぜれば457件のリストになり、数字は良く見えます。 ソーラーリストでは438件と表示し、19棟は別枠にしています。

これも自分たちの失敗から来ています。 開発の途中で判定できなかった建物を営業対象に含めていたことがあり、地図には出さないようにしたものの、 CSVには残ったままでした。出口をひとつ塞いで安心してはいけない、というのを実際に穴を開けて学びました。

リストを検討するときに確認すること

  1. どの航空写真を使っていますか(提供元と地上解像度)
  2. 撮影年度は1件ごとに分かりますか
  3. 判定できなかった建物は、どこに入っていますか
  4. 私たちの営業エリアで、どの解像度が使えますか
  5. 外れたとき、その情報を記録して次に反映できますか

ソーラーリストは、住所を入れるとその地域で使える写真の解像度を先に表示します。 低い解像度しかない地域では、その旨をお伝えした上でお使いいただくかを決めていただいています。

よくあるご質問

リストの精度はどうやって確かめればよいですか

資源エネルギー庁が公表している市区町村ごとのFIT認定件数と、リストが出した設置率を突き合わせます。桁が違えば、そのリストは見落としています。

判定できなかった建物はどうなりますか

ツールによります。「未設置」に混ぜているものと、別枠に分けているものがあります。混ぜていると、そこは高確率で無駄足になります。検討時に必ず確認すべき点です。

どれくらいの精度なら実用ですか

用途によります。訪問前の絞り込みであれば、既設を8割拾えれば無駄足は大きく減ります。ただし「未設置と言い切れるか」は別の話で、現場での確認は残ります。

ソーラーリストは、住所を入れるだけで、 太陽光が付いていない戸建てを地図に出す営業支援ツールです。 対応エリアかどうかを先にお調べします。まず1エリア、無料でお試しいただけます。

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