営業リストの「未設置」は、どこまで信じられるか
結論
リストの「未設置」が外れる原因は、航空写真の撮影時期が古いこと、解像度が足りずパネルと濃い屋根材の区別がつかないこと、判定基準が実態に合っていないことの3つです。実測では、低解像度の写真で判定すると6棟中2棟を見落としました。また判定基準を1か所変えただけで、検出率が0%から7.5%に変わりました。
営業リストの「未設置」が外れると、担当者は玄関先で「もう付いてます」と言われます。 この記事では、なぜそれが起きるのかを3つに分けて、それぞれどれくらいの規模で起きるのかを実測値で示します。 自分たちが作ったツールが実際に間違えた話も含みます。
原因は3つしかない
| 原因 | 何が起きているか | 実測での影響 |
|---|---|---|
| ①撮影時期 | 写真が古く、その後に設置された | 写真は2019年度・2022年度が混在 |
| ②解像度 | パネルが小さすぎて濃い屋根と区別できない | 6棟中2棟を見落とし |
| ③判定基準 | 基準が写真の実態に合っていない | 検出率が0%になった |
①撮影時期 ― 写真は「今」ではない
航空写真は毎年撮り直されるわけではありません。実際に私たちが取得した建物データに紐づいていた撮影年度は、こうでした。
| 撮影年度 | 建物数 |
|---|---|
| 2022年度 | 801棟 |
| 2019年度 | 538棟 |
| 年度が特定できないもの | 1,296棟 |
2019年度の写真で判定した家に、2020年に設置されていたら、リストは外れます。 これは技術の問題ではなく、写真が存在しないという物理の問題です。解決できません。
できるのは、撮影年度を隠さないことです。 リストの1件ごとに「この判定は何年度の写真によるものか」が分かれば、営業する側が「古いから念のため聞いてみよう」と判断できます。 年度が分からないリストは、外れたときに理由すら分かりません。
②解像度 ― パネルが3.4画素にしか写らない
住宅用のパネル1枚は約1.65m×1.0mです。国土地理院が全国で公開している航空写真は1画素0.48mなので、 パネル1枚は3.4画素にしかなりません。
出典:国土地理院 地理院タイル/犬山市 公共測量成果(CC BY 4.0)
この解像度では、次のものがすべて「濃い色の面」として同じに見えます。
- 太陽光パネル
- 濃紺・黒のスレート屋根
- 黒いガルバリウム鋼板
- いぶし銀の日本瓦
実測では、同じ6棟を両方の解像度で見比べて2棟を見落としました。3棟に1棟です。
公式データと突き合わせると、もっとはっきりします
資源エネルギー庁が市区町村ごとのFIT認定件数を公表しています。これと突き合わせました。
| 地域 | FIT認定件数(住宅用) | 戸建て数(概算) | 公式データからの設置率 | 0.48mでの判定 |
|---|---|---|---|---|
| 群馬県太田市 | 13,819件 | 約6.2万戸 | 約22% | 0.5% |
| 東京都世田谷区 | 13,576件 | 約7.7万戸 | 約18% | 0.3% |
桁が2つ違います。これは「少し見落としている」ではなく「ほとんど見えていない」ということです。
FIT認定件数には廃止済みの設備や事業用の小規模設備も含まれ、戸建て数も概算です。 そのまま設置率として使うと実態より高く出ます。ただし桁が2つ違うという結論は、この誤差では動きません。
③判定基準 ― 私たちが実際にやった失敗
ここが一番書きにくいところですが、書きます。同じ写真・同じ仕組みで、判定の基準を1か所変えただけで結果がこう変わりました。
| 判定の基準 | 検出した建物 | パネルあり |
|---|---|---|
| 「パネル1枚ごとの格子が見えること」を必須にした | 19棟 | 0棟(0%) |
| 格子を必須から外した | 40棟 | 3棟(7.5%) |
最初の基準は、青い瓦屋根をパネルと誤認するのを防ぐために入れたものでした。もっともらしい条件です。
ところが使っていたのは0.48mの写真でした。 その解像度では格子は原理的に写りません。1画素より細いものは画像として存在できないからです。 結果、すべてが「パネルなし」に倒れました。
教訓:判定の基準は、その写真で実際に何が見えるかに合わせなければ意味がありません。 厳しくすれば正確になる、というものではありません。
見せ方でも変わりました
もうひとつ、同じ画素数でも「どう切り出して見るか」で結果が変わりました。
| 見せ方 | 1枚に写る棟数 | 検出率 |
|---|---|---|
| 512画素四方にまとめて表示 | 十数棟 | 0% |
| 1棟ずつ40m四方で切り出す | 1棟 | 25% |
出典:犬山市 公共測量成果(CC BY 4.0)/建物の輪郭:国土地理院 地理院地図Vector
逆向きの間違い ― 付いていないのに「あり」にする
ここまでは「あるのに見えない」話でした。逆もあります。 自分たちの判定が実際に外した例を出します。
出典:犬山市 公共測量成果(CC BY 4.0)
犬山市のエリアで「あり」と判定された5棟を、人が拡大して見直した結果です。
| 見直した結果 | 棟数 |
|---|---|
| 明らかにパネル | 2棟 |
| パネルではなかった | 2棟 |
| 判断がつかなかった | 1棟 |
その時点の判定は、半分が外れていました。
ただし、この間違いは「なし」の側とは影響が違います。 誤って「あり」にした家は、営業リストから落ちるだけです。 無駄足にはなりませんが、行けたはずの家に行かないことになります。
| 間違いの向き | 現場で起きること | 気づけるか |
|---|---|---|
| あるのに「なし」にした | 訪問して「もう付いてます」 | 気づく |
| ないのに「あり」にした | リストから落ちる | 気づかない |
2つ目が厄介なのは、誰も気づかないことです。 行かなかった家のことは、営業の現場に情報が返ってきません。
見分け方として一番効いたのは「屋根の一部か、全面か」でした。 パネルは屋根のうち日当たりのよい面にだけ載るので、屋根の輪郭とは別の矩形になります。 屋根材そのものの模様は、屋根の形と一致します。
「判定できなかった」をどう扱うか
ここが、リストの品質で最も差が出るところだと考えています。
どんな仕組みでも、判断のつかない建物は必ず出ます。 木の影がかかっている、写真が雲で白い、屋根の一部しか写っていない、といった理由です。 問題は、それを「未設置」に混ぜるかどうかです。
| 扱い | リストの件数 | 現場で起きること |
|---|---|---|
| 「未設置」に混ぜる | 多く見える | その分だけ「もう付いてます」が増える |
| 別枠に分ける | 少なく見える | リストの中身は信用できる |
実測したエリアでは、462棟のうち19棟(4.1%)が要確認でした。 これを混ぜれば457件のリストになり、数字は良く見えます。 ソーラーリストでは438件と表示し、19棟は別枠にしています。
これも自分たちの失敗から来ています。 開発の途中で判定できなかった建物を営業対象に含めていたことがあり、地図には出さないようにしたものの、 CSVには残ったままでした。出口をひとつ塞いで安心してはいけない、というのを実際に穴を開けて学びました。
リストを検討するときに確認すること
- どの航空写真を使っていますか(提供元と地上解像度)
- 撮影年度は1件ごとに分かりますか
- 判定できなかった建物は、どこに入っていますか
- 私たちの営業エリアで、どの解像度が使えますか
- 外れたとき、その情報を記録して次に反映できますか
ソーラーリストは、住所を入れるとその地域で使える写真の解像度を先に表示します。 低い解像度しかない地域では、その旨をお伝えした上でお使いいただくかを決めていただいています。
よくあるご質問
リストの精度はどうやって確かめればよいですか
資源エネルギー庁が公表している市区町村ごとのFIT認定件数と、リストが出した設置率を突き合わせます。桁が違えば、そのリストは見落としています。
判定できなかった建物はどうなりますか
ツールによります。「未設置」に混ぜているものと、別枠に分けているものがあります。混ぜていると、そこは高確率で無駄足になります。検討時に必ず確認すべき点です。
どれくらいの精度なら実用ですか
用途によります。訪問前の絞り込みであれば、既設を8割拾えれば無駄足は大きく減ります。ただし「未設置と言い切れるか」は別の話で、現場での確認は残ります。
ソーラーリストは、住所を入れるだけで、 太陽光が付いていない戸建てを地図に出す営業支援ツールです。 対応エリアかどうかを先にお調べします。まず1エリア、無料でお試しいただけます。
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